GIMER-STICK

エポキシのブログ

エポキシの耐候性をテストする

次のような質問がよく聞かれます。
「エポキシはどれくらい耐久性があるのか?屋外で何年くらい持つのか?」
「どれくらいで変色(黄変)するのか?」
「エポキシの種類によって黄変の程度に差があるのか?」

このような質問には非常に答えにくい・・・
はっきりしたデータがあるわけでないし、また使う人の状況は様々であろうからそもそもひとつの答えなどあるわけがないからだ。

そこで、私なりにエポキシの耐候性をテストしてみることにしました。同時に黄変についてのテストもおこなってみました。

テストの方法は以下の通り。

塗装された鉄板に各種のエポキシを塗布します。鉄板はそこらへんから拾ってきたものだが、道路工事の看板などに使われているもので白く塗装されているもの。おそらく亜鉛メッキ鋼板に焼付塗装を施したものだろう。
この鉄板に、 「システムスリーエポキシ(硬化剤#2)」 「シルバーチップエポキシ(硬化剤スロー)」 「クリヤーコート」 「SB-112」 「ミラーコート」 を塗る。塗り重ねはせず全て1回塗りとした。
同じ試験片を二つ作ります。
ひとつは、屋内に置く。薄暗い倉庫の棚に、エポキシ面が下になるように置いた。もちろん直射日光など当たらないし、エポキシ面には光そのものもほとんど当たらない状況。ちなみに倉庫は暖房や冷房はない。
もうひとつの試験片は、屋外に置く。ほとんど野ざらしの状態です。天気が良ければ半日は直射日光が当たる。雨もかかる。冬は雪も積もった。寒い日は霜も降りた。かなり過酷な環境。
こうして、定期的にエポキシの変化を観察してみようという実験です。

<注意>
写真は、その時の明かりの状況や露出、カメラの設定などによって写り具合が変化します。写真によっては、全体が赤っぽくなっていたり青っぽくなっていたりします。実際に目で見た感じとは異なる場合があります。そのことをいちおう頭にいれてご覧ください。


■ 2008年7月31日

準備が完了したふたつの試験片。まったく同じもの。
(A)を屋外に置き、(B)を屋内に置く。
実質的には、切りのいい翌日の8月1日から実験を開始した。
システムスリーエポキシは硬化剤(ミディアム、#2)を使用している。そのためはじめから多少黄色っぽい。他の、4種類は無色に近いのでほとんど色が付いているのは分らないだろう。


■ 2008年8月7日

実験開始から約1週間経過した。
(A)は、毎日のように真夏の強烈な日差しを浴びている。紫外線量もかなりのものだろう。気温も高いので試験片そのものもかなり高温になっていると思う。
(A)早くも変化が見られる。システムスリーエポキシとミラーコートがわずかに変色しているようだ。
シルバーチップエポキシ、SB-112は変化はないようだ。


■ 2008年8月19日

実験開始から19日。
システムスリーエポキシとミラーコートが変色しているのが分かる。とくにシステムスリーエポキシはかなり黄変しているようだ。
ほかの3種類は特に変化はないようだ。


■ 2008年9月26日

実験開始から2ヶ月近く経った。
8月、9月は天気もよく、したがって多量の紫外線を受けている。また気温も高いので屋外のエポキシにとってはかなり過酷な環境だったと思う。
油性マジックで書いた文字もかすれ始めているし、鉄板の縁も錆び始めていることで分るだろう。
(A)のエポキシはどれも変色しはじめているようだ。
システムスリーエポキシとミラーコートの黄変が大きいようだ。シルバーチップエポキシ、クリヤーコート、SB-112の変色はわずかだ。



■ 2008年10月22日

実験開始から3ヶ月近く。
全てのエポキシが黄変しているのがはっきり分る。
(B)の方は始めと変わりはないみたい。


■ 2008年12月2日

実験開始から約4ヶ月。
シルバーチップエポキシの黄変は他の4種類に比べて小さいのが分かる。他の4種類は同じくらい黄変している。
写真では分りにくいが、クリヤーコートは表面のつやがなくなり細かいひびができはじめている。他の4種はつやびけはない。
(A)のマジックで書いた文字もほとんど消えてきた。
(B)はほとんど変化なし。


■ 2009年1月8日

実験開始から5ヶ月を超えた。
クリヤーコートは周囲からはがれ始めている。他の4種はつやびけはない。



クリヤーコート

■ 2009年3月7日

実験開始から7ヶ月を超えた。
ここ山陰の冬はどんよりと曇った日が多くあまり日は差さない。しかしここ山間では積雪がかなりある。試験片にも何度も雪が積もった。
クリヤーコートは周囲からかなりはがれている。SB-112もつやびけし、細かいひびが入り始めた。他の3種は目立ったつやびけはない。



クリヤーコート

■ 2009年5月10日

実験開始から9ヶ月を超えた。
天候も良くなり紫外線の量も急に増えていることだろう。前回(3月)の写真と比べると黄変がかなり進んでいるようにも思える。
クリヤーコートのはがれはかなり拡大した。中央部もかなりはがれている。
システムスリーエポキシ、SB-112、ミラーコートのつやがなくなってきた。
この時点でつやが残っているのは、シルバーチップエポキシだけになった。
(B)は最初と目立った変化はみられないようだ。




■ 2009年7月24日

実験開始から約1年が経った。

システムスリーエポキシ シルバーチップエポキシ クリヤーコート SB-112 ミラーコート

いちおうここまで1年間の実験で分かったことをまとめておこう。

◎耐候性について
塗料の耐久性、耐候性は塗膜の厚さがかなり影響することは知られていることだ。
今回の実験では、どのエポキシも1回塗りとしている。塗膜の厚さもかなりばらつきがあったのだろうと思う。(かといって塗膜の厚さを測って一定にそろえて実験するというのも無理だが・・)
今回の実験で「クリヤーコート」が最も早くだめになったのは塗膜が薄かったせいも相当にあると思う。クリヤーコートは粘度が小さいためほかのエポキシに比べて当然薄塗りになっていたはずだ。
だから、この実験から単純に「クリヤーコートが最も耐候性がない」と思わないでほしい。もし、クリヤーコートだけ2度塗りして実験したならば他のエポキシと大差はなかったかもしれない。
写真では分りにくいと思うが、2009/7月時点のシステムスリーエポキシでも、全体的にはつやが無くなっているが、縁の部分でエポキシが厚くなっているところはしっかりとつやが残っているのだ。
この実験から言えることは、エポキシ1回塗り、保護塗装なしで屋外で使用した場合はせいぜい1年が限界だろうということだ。
この実験では、条件に差を際立たせるために、屋外に置く方はかなり過酷な場所を選んだ。日光にあたり、雨風にさらされる場所だ。
実際に使用される場所は、この実験ほど条件の悪い所は少ないだろう。日光に当たる時間が短いとか、雨がかからないとかといった条件ならエポキシの持ちももっとよいはずだ。

◎黄変について
最も黄変が早く現れたのは、システムスリーエポキシだった。次いでミラーコート。
逆に最も黄変が現れるのが遅かったのは、シルバーチップエポキシだった。
クリヤーコート、SB-112は中程度といったところか。
いずれにしてもどのエポキシも黄変する。
早いものでは、日光に当て続けると1週間ほどで変色してくる。

黄変を防ぐには、やはり「WR-LPU」や「スパーウレタンヴァーニッシュ」といった紫外線吸収剤を含む保護塗料で塗装するほかはない。これら保護塗料の効果は驚くべきものでしっかり塗装しておけばほとんど黄変しない。その効果についてはこちらでご覧ください。
「保護塗装の効果をテストする」

一方、日光に当てなかった方のエポキシは、最初とほとんど変化がなかった。つやも最初のまま。変色(黄変)もほとんどない。それほど日光(紫外線)の影響は大きいということだろう。

まとめ
エポキシを屋外のものに塗布して使用する場合は次のことに注意しましょう。
◎1回塗りでは不十分。2度塗りあるいは3度塗りすることで塗膜を厚くすると耐候性、耐久性、防水性は格段に増します。
◎エポキシの上から、紫外線吸収剤を含む塗料で保護塗装する。保護塗装することで、エポキシの傷みを大幅に減らします。同時に変色(黄変)も防ぎます。
◎置く場所は、できるだけ直射日光に当たらない所を選ぶこと。劣化や変色は紫外線による影響が大きい。

なお、保護塗装の効果も永久に続くものではありません。保護塗装のつやが無くなってきたりはげかけてきたりしたら、古い塗装を研磨してから新たに塗り直しましょう。塗り直すことで長い間エポキシを守ることができるでしょう。